実践例:課題に従事中、離席が多い

実践例:課題に従事中、離席が多い

ワークシート1:(基礎情報)

おわかりになる範囲でご記入ください。

年齢 7歳
性別
診断名 自閉症 ADHD
所属 特別支援学級
知能検査 検査名 田中ビネー知能検査Ⅴ
検査結果 IQ54
特徴 人への関心が高く自ら近寄って行って、追いかけっこや抱っこをしてぐるぐる回してもらうことをせがむことがよくある。課題を呈示されると、すぐに興味をもち、手にとれるものであれば立ち上がる。簡単な会話をすることもできる。しかし、例えば、「犬はどれ?」と聞かれて指さしをすることを求められているのに、目に入ったものを「犬、猫・・」といったように命名してしまうなど、指示を聞いておらずに、自分勝手に課題を行うことが多い。いつも体の一部が動いている。初めてのことに対しては、慎重になる様子がみられる。ひらがなを読むことができる。10までの数字は読むことができる。

 

ワークシート2:(MASDurand とCrriminsが1988年に発表した、行動問題の機能を探るための質問紙。16の質問項目からなり、7段階のリッカートスケールで評価を行う。評価の結果をもとに、物や活動の獲得要求、注目要求、逃避要求、感覚要求の4種類の機能のいずれが当該行動の機能である可能性が高いのか、推測することができる。主観的な評価ではあるが、信頼性や妥当性が確認されている。

お子さんの 課題中の離席 という行動についてのMASの採点結果

感覚要因 逃避要求 注目要求 物や活動の要求
1. 2. 3. 4.
5. 6. 7. 8.
9. 10. 11. 12.
13. 14. 15. 16.
合計=
平均点= 1.5 0.75 0.75 1.25
順位=

 

ワークシート3:(行動問題の特徴)

1. その行動はいつ起こることが多いですか? 課題を呈示されたとき
課題を行っている時
2. その行動はどこで起こることが多いですか? 学校の教室
3. その行動は誰に対して、あるいは誰と一緒のときにおこることが多いですか? 教員
4. その行動は何歳くらいから始まっていますか? 3歳くらい
5. その行動はどのくらいの頻度で起こりますか?
(たとえば、1日に2,3回、1時間に1,2回、1週間に1,2回など)
授業中に何度も
6. その行動はどのくらいの強さで起こりますか?
(たとえば、隣の部屋に聞こえるくらいの声、叩いたところが青くなるくらいの強さなど)
7. その行動が起こっている様子を具体的にご記入ください(「他害」というのではなく、頭を自分のこぶしで叩くなど) にこにこ笑いながら、呈示された課題に手を出したり、課題とは無関係のもののところに走っていく
8. その行動に対して、どのように対応しますか?
該当することに○をしてください
放っておく・要求しているものを渡す・好きなことをやらせる・その場から離す・〇注意する・クールダウンのための手続きをとる(具体的には     )・その他      )
9. その行動は上記の方法で収束しますか? 注意されて、自分の席に誘導されれば戻ることができる
10. その行動はどのくらいの時間続きますか? 注意されなければ4,5分~10分程度
11. その行動と関連していると思われる項目があれば、○をして具体的に記入してください。 集団の大きさ(1対1だとほとんどない )
指導形態など(集団のどの授業でも起こる )
12. お子さんが特に興味や関心の高いことは何ですか?また、こだわりはありますか? 何に対しても興味津津のように見えるが、同じ課題を長く続けると関心が薄れる
13. お子さんが苦手なことや嫌いなことはどんなことですか? 新しいこと、いつもと違うこと
14. お子さんの主となるコミュニケーション手段は何ですか? 音声 簡単な文章
15. 左記の項目において、お子さんの好きなことがあれば、具体的にご記入ください。 遊び(おとなとの追いかけっこや抱っこやおんぶ、おもちゃ )
キャラクター(NHKの子ども番組のもの )
歌手(               )
食べ物(              )
趣味(               )
その他(              )
16. お子さんが人とのかかわりで喜ぶことはどんなことがありますか?先の項目において該当することがあれば具体的にご記入ください 拍手・頭なで・ハイタッチ・握手・くすぐりなど
遊び(おとなとの追いかけっこや抱っこやおんぶ)
賞賛(正答のフィードバックや「よくできたね」「いい子だね」などのことば     )
お手伝い(             )
儀式的なやり取り(         )
お出かけ(             )
お小遣い (            )
その他(              )

ワークシート7:(頭の中のアセスメント)

行動問題が生じているときの子どもの頭の中(気持ち)を想像して吹き出しに書いてみましょう。複数挙げることが大切です。

ワークシート8:(ABC分析)

行動問題の直前に起こっていることをきっかけの箱に、具体的な行動を行動の箱に、行動の直後に起こった結果あるいは周囲の対応について結果及び対応の箱に記入しましょう。ほかの人がみても書いた人と同じことを思い浮かべることができるように書くことが大切です。行動問題が起こる状況がたくさんある場合には、必要に応じて、箱を増やしてください。

きっかけ 行動 結果および対応
課題の呈示
課題中
離席して課題を手に入れようとする
立ちあがって、興味のあるもののところに行く
課題を手に取ることができる
先生に注意されたり、そばに来てもらったりする
課題以外の興味のある物のそばに行ける

支援計画

支援方針

1.自ら離席してしまう行動をコントロールする
きっかけ 行動 結果および対応
課題中
タイマーで合図
自己記録標的行動の生起の有無やその質及び量などに関して、自ら記録すること。用紙に着席していなければ穴をあける。立っていたら穴をあけない。 5つ穴があいたら、バックアップ強化子トークンとは般性強化子あるいは代理貨幣ともいわれる。トークンを集めることにより、価値のある強化子=バックアップ強化子と交換できるシステムをトークンエコノミーシステムという。と交換する

授業中、5分に1回、タイマーが鳴るように設定する。
タイマーは携帯電話のバイブレータを使い、スヌーズ機能を用いて設定する。5分間のいつ鳴るのか不定期に設定する(変動間隔スケジュール一定の期間の中でランダムな時点で強化される。たとえば、4時間働いたら10分間休憩をとってもよいけれど、お客さんがいないときに取るように言われているコンビニストアーのアルバイトなど。)。タイマーは、ベルトに袋をつけてその中に入れておく。自己記録用紙は、ビンゴカードの数字を1から順番に入れなおしたものを用いる(以下の写真の通り)。

バックアップ強化子との交換は、休み時間に行い、学校で他の子どもへの影響を配慮して、シールやスタンプ、係活動や朝の会の司会などの役割とする。何をバックアップ強化子とするのかは、その都度本人と話をして、本人に選択させる。

ポイント

  1. 離席のたびに先生が自己記録のための合図を行っていると、先生から注目されることになってしまうため、一人でできるような教材を使うこととする。
  2. 自分が立っているのかいないのかについて正しく判断するために、あらかじめ個別指導の時間に練習をすることが必要である。